その子グマは、銀色の羽を持っていました。
子グマはある時、その羽を、小さなかごに入れて、
森に散歩に出かけました。
森には、たくさんの花が咲いていました。
中でも、とりわけ、美しくみごとに咲いた花がありました。
それは、白いおおきな花びらをもっていて、
なかほどには、金色の花粉をまきちらす、
きれいな王冠を戴いていました。
その日、空には、透明な白い魚が泳いでいました。
子グマは、魚の骨が白く浮かび上がっているのを確かめて、
また、白い花に目をやりました。
子グマは、花粉が飛んでいく先に注意して見ていました。
花粉は、スルスルと舞い上がり、
空へ昇って行きます。
そして、それは、白く透きとおる魚の口へ、
入っていくのでした。
魚は時々、泡を吹き出していました。
その泡は、ゆっくり、ゆっくり、と、
沈んでいって・・・・
地上に舞い降りていました。
泡が降りつもった部分は、
きらきらと凍りついていました。
やがて、氷の小山は、静かに崩れていき・・・・
その中から花の芽が顔をだしました。
子グマが見ていると、
つぼみは、すくすくと、伸びていきます。
やがて、たくさんの銀色の葉が生まれ、
花のつぼみが生まれました。
子グマには、自分の持っている羽が、
その銀色の葉にそっくりなのが、分かりました。
すぐに、つぼみが開きました。
あの、白いおおきな花びらの、金色の王冠を戴いた花でした。
子グマは、自分の銀色の羽を、
その花のわきに、そっと置いて、
しばらく、花の匂いを嗅いでいました。
それから、子グマは、また、
今度は空になったかごを提げて、
来た道を引きかえしました。
空の魚が、すこし、青くなったようでした。
2009年9月8日火曜日
第 1 話 青い星
*~~~~~~~~*~~~~~~~~~~** もくじ **~~~~~~~~~~*~~~~~~~~~*
1. ウサギとスープ
2. 森
3. 湖と白鳥
4. 子グマに出会う
5. 子グマのあとを追う
6. 空の中へ
7. 子グマとの再会
8. いろいろなものに出会う
9. もっといろいろなものに出会う
10. 白いもの
11. 白いものは、何だったでしょう
12. 椅子に座る
13. 穴
14. 青い珠
15. 宇宙船
16. 帰路
17. 丘の上から
18. 我が家
19. ウサギ
20. クランベリーパイ
***********************************************************************
1. ウサギとスープ
今日、ウサギがウチの門を叩きました。
目のまんまるい、ちいさな白いウサギです。
何が欲しいのか尋ねると、
野菜のスープをボウルに一杯所望します。
わたしは、ニンジンとキャベツの入ったスープを、
ウサギにやりました。
ウサギは、「ありがとう!」と、一言叫ぶと、
嬉しそうに、跳ねて行きました。
わたしは、一体あのウサギは、
何処に住んでいるのだろうと、首を傾げました。
今度また来たときのために、
ニンジンとキャベツと、それにサヤインゲンを、
もう少し、買い足して置くことにしました。
**********************************************************************
2. 森
このあいだのウサギが、
その後どうなったか、わかりますか?
2、3日前のことです。
わたしが通りを歩いていると、
あの白いちいさなウサギが、
道端の草むらをごそごそしているのに気が付きました。
声をかけようとする矢先に、
ウサギは、ピョンピョン跳ねて、
どんどん向うへ行ってしまいます。
わたしは、少し迷ってから、
後を追いかけました。
ずっと追いかけていくと、
森にたどり着きました。
大きな森で、ひんやりとしていました。
ウサギは薄暗い森の中を、今度は、ゆっくりと進んで行きます。
やがて、大きな大きな木の根元までやって来ました。
ウサギは、しばらくその根元でのんびりしたかと思うと、
また、別の方へと走って行ってしまいました。
わたしは、木の根元へ、行ってみました。
枯葉が何枚もかさねてあったので、
それをよけてみました。
葉の下には、きれいに光るガラスの破片や、木の実が
たくさん隠されていました。
その中に、ひとつだけ、見たことのない美しい珠がありました。
不思議に思いましたが、そのままにして、
わたしは、もと来た道を引き返しました。
これが、今日のご報告です。
**********************************************************************
3. 湖と白鳥
あれから、ウサギはどうなったのでしょう。
わたしは、時々、森の中へ行ってみたり、
道端の草むらを注意して見たりしましたが、
長いこと、ウサギは姿をみせませんでした。
その日、わたしは、湖に来ていました。
暑い夏の日差しをさけて、
一時の涼しさを味わいに来ていたのです。
湖は深い青を湛えて、神秘的でした。
岸辺には、色とりどりの花が咲いています。
ふと、湖のさざ波に眼をやると、
白鳥が1羽、スイとこちらにやって来ます。
真っ直ぐにわたしの前へ来たかと思うと、
くちばしをつき出します。
わたしが、反射的に手を差し伸べますと、
白鳥は、わたしの手の中に、
あの、ウサギの森の中で見つけた、
美しい珠を、静かに置いたのです。
白鳥は、それだけのことをすませると、
また、スイと、泳いでいってしまいました。
わたしは、しばらく、手の中の珠を眺めていましたが、
それから、どうしたらいいかも分からず、
ただ、あてもなく、歩きはじめました。
手始めに、湖の岸を離れて、
その裏手にある、森のほうへ、進んで行きました。
**********************************************************************
4. 子グマに出会う
湖をあとにしたわたしが、
そのあと、どんな出来事に出合ったと思いますか?
待って下さい、
順番に話を進めましょう。
森の中に入ったわたしは、
もう1度、あの枯葉のあった木の下まで、
行ってみました。
そして、枯葉をのけてみると・・・
そこには、今は、何もありませんでした。
ただ、枯葉が盛ってあるだけだったのです。
なんとなく、ガッカリしたわたしが、
また、歩き出そうとして、
顔をあげると、
子グマが一匹、
わたしの脇を、すり抜けていきました。
わたしは、子グマのあとを、
追うことにしました。
**********************************************************************
5. 子グマのあとを追う
子グマは、トッコトッコ、トッコトッコと、
歩いて行きました。
わたしも、そのあとを、
トッコトッコ、トッコトッコと、
くっついて行きました。
子グマは、時おり、ふんふんと鼻歌をうたいながら、
わき目もふらずに、進んで行きました。
いえ、時々、きょろきょろと、辺りを見回しているようです。
そのうち、小高い丘へ来ました。
子グマは、トットとその丘を登り、
わたしも、トットと登りました。
丘の頂上に、
1本の木がありました。
銀色をした、
立派なおおきな木です。
子グマは、するすると、その木を登りはじめました。
見ていると、木のてっぺんについた子グマは、
何かを目で探し求めているようです。
やがて、わたしのところからはよく見えない何かを見つけると、
さっと、手をのばして、それに飛びつきました。
子グマは、グン、とひと振りゆれると、
弧を描くようにして、
空の中へと、運ばれて行きました。
**********************************************************************
6. 空の中へ
わたしも、続いて、するすると木に登りました。
子グマが飛びついたものは、なんだったのでしょう?
木のてっぺんにつくと、
わたしも目をこらして、その「何か」を探しました。
あ、ありました!
細い細い、目に見えるか見えないかの、細い糸です。
クモの糸なのでしょうか。
わたしは、その糸がゆらゆら揺れるのを目で追いながら、
飛びつくチャンスをうかがいました。
そして・・・
グーン、と糸に運ばれて、
空の中へ・・・
おや、今は、何時でしたっけ?
空の中は、夜です。
月が笑い、星がさやさやとささやいています。
子グマは、どこへ行ったのでしょう?
**********************************************************************
7. 子グマとの再会
わたしは、月に手を振りながら、
夜空の星々のなかを歩きはじめました。
色々なものがいて、
色々なものがありました。
少しいくと、
子グマがいました。
宇宙船のよこに立って、
敬礼して何かを話しています。
子グマが話している相手は・・・
夜の女王でした。
立派な玉座に座っています。
美しい王冠を頭に戴いています。
何を話しているのかは、
わたしのところからは、分かりませんでした。
邪魔をしてはいけない気持ちになって、
わたしは、かたわらを通り過ぎました。
子グマに、チラと目で合図をおくりましたが、
子グマが気づいたかどうかは、わかりません。
わたしは、もっと、いろいろなものを見ようと、
先へ行きました・・・。
*********************************************************************
8. いろいろなものに出会う
また少し行くと、
子ネコが、月の子供と遊んでいました。
月の子供は3日月形をしていました。
子ネコがじゃれつくと、
月の子供は、うれしそうに、キャッキャッと
笑っていました。
少し先に、
大きな真っ黒い木がありました。
木には、白い紙が貼ってあって、
地図が書いてありました。
「もっと、先へ行け」
と、書いてありました。
また少し行くと、
今度は、銀色の木がありました。
金色の鳥が、
赤い木の実をついばんでいます。
わたしは、鳥に聞きました。
「もっと、先へ行くと、何があるの?」
鳥は、一声高くさえずりましたが、
何も答えませんでした。
わたしは、さらに進みました。
**********************************************************************
9. もっといろいろなものに出会う
わたしは、どんどんどんどん、
歩いて行きました。
クジラが白いきらめく星を
頭の上から吹き出していました。
星の生まれる場所は、
ここなのかしら?
黒ネコが、白い長い棒のうえを、
上手に歩いていました。
ときどき、逆立ちをしていました。
白鳥が、赤いボールを
頭の上にのせて、スイスイと泳いでいます。
わたしに、美しい珠を渡してくれた白鳥かどうかは、
分かりませんでした。話しかけようとしたら、
スイ、と行ってしまいましたから。
ウサギがどこからともなくやって来て、
わたしのまえを、ピョンピョンはねて行きます。
わたしは、あたりまえのような気持ちで、
あとをついて行きました。
そして・・・
**********************************************************************
10. 白いもの
やがて、まわりには、
星々のほか、なにも見えなくなりました。
ウサギもいつの間にかいなくなってしまいました。
そして、今、とおくに、何か白い小さなものが、
見えていました。
星々の中に、ぽつんと、何かが、置いてあるようでした。
わたしは、その何かを目でたしかめようと、
走って行きました・・・
**********************************************************************
11. 白いものは、何だったでしょう
それは、近づいて来ました。
少しずつ・・・
少しずつ・・・
それは、何か少し、四角い形をしているように、見えました・・・
もう少し、形がはっきりして来ました。
それは・・・
椅子でした・・・!
小さな、白い、可愛らしい、
椅子でした!
**********************************************************************
12. 椅子に座る
それは、小さく、白く、
星々のあいだに、ポッカリと浮かんでいました。
わたしは、試しに、その椅子に座ってみることにしました。
たくさんの星が見えました。
濃い藍色をたたえた夜空の中で、
星々は、いかにも高貴にみえました。
そして、楽しげにみえました。
月が浮かんで、笑っていました。
ここへ来たときと同じように。
優しく。
**********************************************************************
13. 穴
わたしは、しばらく、
夜空を眺めていました。
それは、とても、素敵な時間でした。
そして、そんな風に夜空を眺めているうちに、
何かおかしなことが、その夜空にあるのに気づきました。
わたしは、ある1点を、じっと、目を凝らして見ました。
そこは、白く丸く、ぽっかりと穴が開いているようでした。
何かがあったはずなのに、なくなってしまったように。
それから、わたしは、自分の手の中にある、
白鳥にもらった、美しい珠を見ました。
今、それは、前よりもずっと、美しく、
透明な青色に輝いていました。
**********************************************************************
14. 青い珠
わたしは、その青い輝く珠を軽くつまんで、
白い穴に当て嵌めるかのように、
手を差し出しました。
すると、驚いたことに、
青い珠は、何かに引っぱられるかのように、
スルスルと、穴の方へと、逃げて行きました。
そして、あたりまえのように、
ポンッ、と、
その穴にはまったのです。
青い珠は、いまでは、
青い星になって、キラキラと瞬いていました。
ほかの星たちが、喜んで、
合唱をはじめたようでした。
**********************************************************************
15. 宇宙船
そのとたん、
わたしが、星たちの合唱に耳を傾ける間もなく、
あの、子グマの宇宙船が、
わたしの傍らに来ていました。
ドアが開いて、
子グマが手招きをしています。
わたしは、誘われるままに、
ドアの中に入りました。
ドアが閉まる瞬間、
夜の女王が、わたしにむかって、
軽くおじぎをしたのが見えた気がしました。
が、確かなことは、ここでも分かりません。
わたしが、確かめようとする間もなく、
宇宙船は、もう、出発していました――。
**********************************************************************
16. 帰路
宇宙船は、星々のあいだを抜けて、
ヒュウヒュウと突き進みました。
途中、わたしが出会った、
たくさんのものたちの顔がみえました。
子ネコはあいかわらず、月の子供と遊んでいましたし、
クジラは、星を吹いていました。
わたしは、それらの姿を見るうちに、
少し、名残り惜しい気がしてきました。
わたしには、もう、自分が帰路に就いているのが、
分かっていたのです。
子グマは、そのあいだ、
ずっと、窓の外を見ていました。
**********************************************************************
17. 丘の上から
やがて、宇宙船は、スッ、と止まりました。
丘の上の、大きな銀色の木の真上に来ていました。
ドアが開き、
ドアから、木に向かって、
クモの糸が張られていました。
わたしは、子グマにさよならの挨拶をして、
クモの糸をつたって、
銀色の木のてっぺんに降り立ちました。
そして、木をスルスルと伝い降りて、
地面に足を降ろしました。
今では、地上から見ても、
空は夜の顔になっていました。
ひときわ明るく輝く青い星が、
月のそばで、瞬いています。
わたしが、置いてきたあの珠なのでしょうか?
やっぱり、たしかなことは、分かりません。
**********************************************************************
18. 我が家
それから、わたしは、歩きはじめました。
森を抜けて、湖のそばを通り抜け、
我が家にたどり着きました。
わたしは、とても疲れていたので、
すぐに、ベッドに入って、
ぐっすりと、眠ってしまいました。
**********************************************************************
19. ウサギ
よく朝、目が覚めて、
わたしは、昨日のことを思い起こしながら、
朝の空気を楽しもうと、
玄関のドアを開けました・・・
すると、そこには・・・
あの白い小さなウサギが来ていました。
ウサギは、またスープを所望しましたので、
わたしは、少し待つように言って、
キャベツとニンジンとインゲンのスープを
急いでこしらえ、
ウサギにやりました。
ウサギは、今度は何も言わずに、
ピョンピョンと、帰って行きました。
**********************************************************************
20. クランベリーパイ
わたしは、ウサギはもう 、
来ないだろうという気がしたので、
スープの材料は、あわてて用意する必要はないだろうと、
考えました。
その代わりに、自分のために、
クランベリーと、小麦粉を、
今日は、買いに行くことにしました。
クランベリーのパイを焼こうと思ったのです。
おいしそうでしょう?
わたしの話は、
これで、おしまいです。
*----------*----------*----------*----------*----------*----------*---------*----------*
1. ウサギとスープ
2. 森
3. 湖と白鳥
4. 子グマに出会う
5. 子グマのあとを追う
6. 空の中へ
7. 子グマとの再会
8. いろいろなものに出会う
9. もっといろいろなものに出会う
10. 白いもの
11. 白いものは、何だったでしょう
12. 椅子に座る
13. 穴
14. 青い珠
15. 宇宙船
16. 帰路
17. 丘の上から
18. 我が家
19. ウサギ
20. クランベリーパイ
***********************************************************************
1. ウサギとスープ
今日、ウサギがウチの門を叩きました。
目のまんまるい、ちいさな白いウサギです。
何が欲しいのか尋ねると、
野菜のスープをボウルに一杯所望します。
わたしは、ニンジンとキャベツの入ったスープを、
ウサギにやりました。
ウサギは、「ありがとう!」と、一言叫ぶと、
嬉しそうに、跳ねて行きました。
わたしは、一体あのウサギは、
何処に住んでいるのだろうと、首を傾げました。
今度また来たときのために、
ニンジンとキャベツと、それにサヤインゲンを、
もう少し、買い足して置くことにしました。
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2. 森
このあいだのウサギが、
その後どうなったか、わかりますか?
2、3日前のことです。
わたしが通りを歩いていると、
あの白いちいさなウサギが、
道端の草むらをごそごそしているのに気が付きました。
声をかけようとする矢先に、
ウサギは、ピョンピョン跳ねて、
どんどん向うへ行ってしまいます。
わたしは、少し迷ってから、
後を追いかけました。
ずっと追いかけていくと、
森にたどり着きました。
大きな森で、ひんやりとしていました。
ウサギは薄暗い森の中を、今度は、ゆっくりと進んで行きます。
やがて、大きな大きな木の根元までやって来ました。
ウサギは、しばらくその根元でのんびりしたかと思うと、
また、別の方へと走って行ってしまいました。
わたしは、木の根元へ、行ってみました。
枯葉が何枚もかさねてあったので、
それをよけてみました。
葉の下には、きれいに光るガラスの破片や、木の実が
たくさん隠されていました。
その中に、ひとつだけ、見たことのない美しい珠がありました。
不思議に思いましたが、そのままにして、
わたしは、もと来た道を引き返しました。
これが、今日のご報告です。
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3. 湖と白鳥
あれから、ウサギはどうなったのでしょう。
わたしは、時々、森の中へ行ってみたり、
道端の草むらを注意して見たりしましたが、
長いこと、ウサギは姿をみせませんでした。
その日、わたしは、湖に来ていました。
暑い夏の日差しをさけて、
一時の涼しさを味わいに来ていたのです。
湖は深い青を湛えて、神秘的でした。
岸辺には、色とりどりの花が咲いています。
ふと、湖のさざ波に眼をやると、
白鳥が1羽、スイとこちらにやって来ます。
真っ直ぐにわたしの前へ来たかと思うと、
くちばしをつき出します。
わたしが、反射的に手を差し伸べますと、
白鳥は、わたしの手の中に、
あの、ウサギの森の中で見つけた、
美しい珠を、静かに置いたのです。
白鳥は、それだけのことをすませると、
また、スイと、泳いでいってしまいました。
わたしは、しばらく、手の中の珠を眺めていましたが、
それから、どうしたらいいかも分からず、
ただ、あてもなく、歩きはじめました。
手始めに、湖の岸を離れて、
その裏手にある、森のほうへ、進んで行きました。
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4. 子グマに出会う
湖をあとにしたわたしが、
そのあと、どんな出来事に出合ったと思いますか?
待って下さい、
順番に話を進めましょう。
森の中に入ったわたしは、
もう1度、あの枯葉のあった木の下まで、
行ってみました。
そして、枯葉をのけてみると・・・
そこには、今は、何もありませんでした。
ただ、枯葉が盛ってあるだけだったのです。
なんとなく、ガッカリしたわたしが、
また、歩き出そうとして、
顔をあげると、
子グマが一匹、
わたしの脇を、すり抜けていきました。
わたしは、子グマのあとを、
追うことにしました。
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5. 子グマのあとを追う
子グマは、トッコトッコ、トッコトッコと、
歩いて行きました。
わたしも、そのあとを、
トッコトッコ、トッコトッコと、
くっついて行きました。
子グマは、時おり、ふんふんと鼻歌をうたいながら、
わき目もふらずに、進んで行きました。
いえ、時々、きょろきょろと、辺りを見回しているようです。
そのうち、小高い丘へ来ました。
子グマは、トットとその丘を登り、
わたしも、トットと登りました。
丘の頂上に、
1本の木がありました。
銀色をした、
立派なおおきな木です。
子グマは、するすると、その木を登りはじめました。
見ていると、木のてっぺんについた子グマは、
何かを目で探し求めているようです。
やがて、わたしのところからはよく見えない何かを見つけると、
さっと、手をのばして、それに飛びつきました。
子グマは、グン、とひと振りゆれると、
弧を描くようにして、
空の中へと、運ばれて行きました。
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6. 空の中へ
わたしも、続いて、するすると木に登りました。
子グマが飛びついたものは、なんだったのでしょう?
木のてっぺんにつくと、
わたしも目をこらして、その「何か」を探しました。
あ、ありました!
細い細い、目に見えるか見えないかの、細い糸です。
クモの糸なのでしょうか。
わたしは、その糸がゆらゆら揺れるのを目で追いながら、
飛びつくチャンスをうかがいました。
そして・・・
グーン、と糸に運ばれて、
空の中へ・・・
おや、今は、何時でしたっけ?
空の中は、夜です。
月が笑い、星がさやさやとささやいています。
子グマは、どこへ行ったのでしょう?
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7. 子グマとの再会
わたしは、月に手を振りながら、
夜空の星々のなかを歩きはじめました。
色々なものがいて、
色々なものがありました。
少しいくと、
子グマがいました。
宇宙船のよこに立って、
敬礼して何かを話しています。
子グマが話している相手は・・・
夜の女王でした。
立派な玉座に座っています。
美しい王冠を頭に戴いています。
何を話しているのかは、
わたしのところからは、分かりませんでした。
邪魔をしてはいけない気持ちになって、
わたしは、かたわらを通り過ぎました。
子グマに、チラと目で合図をおくりましたが、
子グマが気づいたかどうかは、わかりません。
わたしは、もっと、いろいろなものを見ようと、
先へ行きました・・・。
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8. いろいろなものに出会う
また少し行くと、
子ネコが、月の子供と遊んでいました。
月の子供は3日月形をしていました。
子ネコがじゃれつくと、
月の子供は、うれしそうに、キャッキャッと
笑っていました。
少し先に、
大きな真っ黒い木がありました。
木には、白い紙が貼ってあって、
地図が書いてありました。
「もっと、先へ行け」
と、書いてありました。
また少し行くと、
今度は、銀色の木がありました。
金色の鳥が、
赤い木の実をついばんでいます。
わたしは、鳥に聞きました。
「もっと、先へ行くと、何があるの?」
鳥は、一声高くさえずりましたが、
何も答えませんでした。
わたしは、さらに進みました。
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9. もっといろいろなものに出会う
わたしは、どんどんどんどん、
歩いて行きました。
クジラが白いきらめく星を
頭の上から吹き出していました。
星の生まれる場所は、
ここなのかしら?
黒ネコが、白い長い棒のうえを、
上手に歩いていました。
ときどき、逆立ちをしていました。
白鳥が、赤いボールを
頭の上にのせて、スイスイと泳いでいます。
わたしに、美しい珠を渡してくれた白鳥かどうかは、
分かりませんでした。話しかけようとしたら、
スイ、と行ってしまいましたから。
ウサギがどこからともなくやって来て、
わたしのまえを、ピョンピョンはねて行きます。
わたしは、あたりまえのような気持ちで、
あとをついて行きました。
そして・・・
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10. 白いもの
やがて、まわりには、
星々のほか、なにも見えなくなりました。
ウサギもいつの間にかいなくなってしまいました。
そして、今、とおくに、何か白い小さなものが、
見えていました。
星々の中に、ぽつんと、何かが、置いてあるようでした。
わたしは、その何かを目でたしかめようと、
走って行きました・・・
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11. 白いものは、何だったでしょう
それは、近づいて来ました。
少しずつ・・・
少しずつ・・・
それは、何か少し、四角い形をしているように、見えました・・・
もう少し、形がはっきりして来ました。
それは・・・
椅子でした・・・!
小さな、白い、可愛らしい、
椅子でした!
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12. 椅子に座る
それは、小さく、白く、
星々のあいだに、ポッカリと浮かんでいました。
わたしは、試しに、その椅子に座ってみることにしました。
たくさんの星が見えました。
濃い藍色をたたえた夜空の中で、
星々は、いかにも高貴にみえました。
そして、楽しげにみえました。
月が浮かんで、笑っていました。
ここへ来たときと同じように。
優しく。
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13. 穴
わたしは、しばらく、
夜空を眺めていました。
それは、とても、素敵な時間でした。
そして、そんな風に夜空を眺めているうちに、
何かおかしなことが、その夜空にあるのに気づきました。
わたしは、ある1点を、じっと、目を凝らして見ました。
そこは、白く丸く、ぽっかりと穴が開いているようでした。
何かがあったはずなのに、なくなってしまったように。
それから、わたしは、自分の手の中にある、
白鳥にもらった、美しい珠を見ました。
今、それは、前よりもずっと、美しく、
透明な青色に輝いていました。
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14. 青い珠
わたしは、その青い輝く珠を軽くつまんで、
白い穴に当て嵌めるかのように、
手を差し出しました。
すると、驚いたことに、
青い珠は、何かに引っぱられるかのように、
スルスルと、穴の方へと、逃げて行きました。
そして、あたりまえのように、
ポンッ、と、
その穴にはまったのです。
青い珠は、いまでは、
青い星になって、キラキラと瞬いていました。
ほかの星たちが、喜んで、
合唱をはじめたようでした。
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15. 宇宙船
そのとたん、
わたしが、星たちの合唱に耳を傾ける間もなく、
あの、子グマの宇宙船が、
わたしの傍らに来ていました。
ドアが開いて、
子グマが手招きをしています。
わたしは、誘われるままに、
ドアの中に入りました。
ドアが閉まる瞬間、
夜の女王が、わたしにむかって、
軽くおじぎをしたのが見えた気がしました。
が、確かなことは、ここでも分かりません。
わたしが、確かめようとする間もなく、
宇宙船は、もう、出発していました――。
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16. 帰路
宇宙船は、星々のあいだを抜けて、
ヒュウヒュウと突き進みました。
途中、わたしが出会った、
たくさんのものたちの顔がみえました。
子ネコはあいかわらず、月の子供と遊んでいましたし、
クジラは、星を吹いていました。
わたしは、それらの姿を見るうちに、
少し、名残り惜しい気がしてきました。
わたしには、もう、自分が帰路に就いているのが、
分かっていたのです。
子グマは、そのあいだ、
ずっと、窓の外を見ていました。
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17. 丘の上から
やがて、宇宙船は、スッ、と止まりました。
丘の上の、大きな銀色の木の真上に来ていました。
ドアが開き、
ドアから、木に向かって、
クモの糸が張られていました。
わたしは、子グマにさよならの挨拶をして、
クモの糸をつたって、
銀色の木のてっぺんに降り立ちました。
そして、木をスルスルと伝い降りて、
地面に足を降ろしました。
今では、地上から見ても、
空は夜の顔になっていました。
ひときわ明るく輝く青い星が、
月のそばで、瞬いています。
わたしが、置いてきたあの珠なのでしょうか?
やっぱり、たしかなことは、分かりません。
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18. 我が家
それから、わたしは、歩きはじめました。
森を抜けて、湖のそばを通り抜け、
我が家にたどり着きました。
わたしは、とても疲れていたので、
すぐに、ベッドに入って、
ぐっすりと、眠ってしまいました。
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19. ウサギ
よく朝、目が覚めて、
わたしは、昨日のことを思い起こしながら、
朝の空気を楽しもうと、
玄関のドアを開けました・・・
すると、そこには・・・
あの白い小さなウサギが来ていました。
ウサギは、またスープを所望しましたので、
わたしは、少し待つように言って、
キャベツとニンジンとインゲンのスープを
急いでこしらえ、
ウサギにやりました。
ウサギは、今度は何も言わずに、
ピョンピョンと、帰って行きました。
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20. クランベリーパイ
わたしは、ウサギはもう 、
来ないだろうという気がしたので、
スープの材料は、あわてて用意する必要はないだろうと、
考えました。
その代わりに、自分のために、
クランベリーと、小麦粉を、
今日は、買いに行くことにしました。
クランベリーのパイを焼こうと思ったのです。
おいしそうでしょう?
わたしの話は、
これで、おしまいです。
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