2009年9月13日日曜日

第 2 話 銀の羽

その子グマは、銀色の羽を持っていました。
子グマはある時、その羽を、小さなかごに入れて、
森に散歩に出かけました。

森には、たくさんの花が咲いていました。
中でも、とりわけ、美しくみごとに咲いた花がありました。
それは、白いおおきな花びらをもっていて、
なかほどには、金色の花粉をまきちらす、
きれいな王冠を戴いていました。

その日、空には、透明な白い魚が泳いでいました。
子グマは、魚の骨が白く浮かび上がっているのを確かめて、
また、白い花に目をやりました。

子グマは、花粉が飛んでいく先に注意して見ていました。
花粉は、スルスルと舞い上がり、
空へ昇って行きます。

そして、それは、白く透きとおる魚の口へ、
入っていくのでした。

魚は時々、泡を吹き出していました。
その泡は、ゆっくり、ゆっくり、と、
沈んでいって・・・・

地上に舞い降りていました。
泡が降りつもった部分は、
きらきらと凍りついていました。

やがて、氷の小山は、静かに崩れていき・・・・

その中から花の芽が顔をだしました。
子グマが見ていると、
つぼみは、すくすくと、伸びていきます。

やがて、たくさんの銀色の葉が生まれ、
花のつぼみが生まれました。

子グマには、自分の持っている羽が、
その銀色の葉にそっくりなのが、分かりました。

すぐに、つぼみが開きました。
あの、白いおおきな花びらの、金色の王冠を戴いた花でした。

子グマは、自分の銀色の羽を、
その花のわきに、そっと置いて、
しばらく、花の匂いを嗅いでいました。

それから、子グマは、また、
今度は空になったかごを提げて、
来た道を引きかえしました。

空の魚が、すこし、青くなったようでした。

2009年9月8日火曜日

第 1 話 青い星

*~~~~~~~~*~~~~~~~~~~** もくじ **~~~~~~~~~~*~~~~~~~~~*

1. ウサギとスープ
2. 森
3. 湖と白鳥
4. 子グマに出会う
5. 子グマのあとを追う
6. 空の中へ
7. 子グマとの再会
8. いろいろなものに出会う
9. もっといろいろなものに出会う
10. 白いもの
11. 白いものは、何だったでしょう
12. 椅子に座る
13. 穴
14. 青い珠
15. 宇宙船
16. 帰路
17. 丘の上から
18. 我が家
19. ウサギ
20. クランベリーパイ


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1. ウサギとスープ

今日、ウサギがウチの門を叩きました。
目のまんまるい、ちいさな白いウサギです。

何が欲しいのか尋ねると、
野菜のスープをボウルに一杯所望します。

わたしは、ニンジンとキャベツの入ったスープを、
ウサギにやりました。

ウサギは、「ありがとう!」と、一言叫ぶと、
嬉しそうに、跳ねて行きました。

わたしは、一体あのウサギは、
何処に住んでいるのだろうと、首を傾げました。

今度また来たときのために、
ニンジンとキャベツと、それにサヤインゲンを、
もう少し、買い足して置くことにしました。


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2. 森

このあいだのウサギが、
その後どうなったか、わかりますか?

2、3日前のことです。
わたしが通りを歩いていると、
あの白いちいさなウサギが、
道端の草むらをごそごそしているのに気が付きました。
声をかけようとする矢先に、
ウサギは、ピョンピョン跳ねて、
どんどん向うへ行ってしまいます。
わたしは、少し迷ってから、
後を追いかけました。

ずっと追いかけていくと、
森にたどり着きました。
大きな森で、ひんやりとしていました。
ウサギは薄暗い森の中を、今度は、ゆっくりと進んで行きます。

やがて、大きな大きな木の根元までやって来ました。
ウサギは、しばらくその根元でのんびりしたかと思うと、
また、別の方へと走って行ってしまいました。

わたしは、木の根元へ、行ってみました。
枯葉が何枚もかさねてあったので、
それをよけてみました。

葉の下には、きれいに光るガラスの破片や、木の実が
たくさん隠されていました。
その中に、ひとつだけ、見たことのない美しい珠がありました。
不思議に思いましたが、そのままにして、
わたしは、もと来た道を引き返しました。

これが、今日のご報告です。


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3. 湖と白鳥

あれから、ウサギはどうなったのでしょう。
わたしは、時々、森の中へ行ってみたり、
道端の草むらを注意して見たりしましたが、
長いこと、ウサギは姿をみせませんでした。

その日、わたしは、湖に来ていました。
暑い夏の日差しをさけて、
一時の涼しさを味わいに来ていたのです。
湖は深い青を湛えて、神秘的でした。
岸辺には、色とりどりの花が咲いています。

ふと、湖のさざ波に眼をやると、
白鳥が1羽、スイとこちらにやって来ます。
真っ直ぐにわたしの前へ来たかと思うと、
くちばしをつき出します。

わたしが、反射的に手を差し伸べますと、
白鳥は、わたしの手の中に、
あの、ウサギの森の中で見つけた、
美しい珠を、静かに置いたのです。

白鳥は、それだけのことをすませると、
また、スイと、泳いでいってしまいました。

わたしは、しばらく、手の中の珠を眺めていましたが、
それから、どうしたらいいかも分からず、
ただ、あてもなく、歩きはじめました。

手始めに、湖の岸を離れて、
その裏手にある、森のほうへ、進んで行きました。


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4. 子グマに出会う

湖をあとにしたわたしが、
そのあと、どんな出来事に出合ったと思いますか?

待って下さい、
順番に話を進めましょう。

森の中に入ったわたしは、
もう1度、あの枯葉のあった木の下まで、
行ってみました。
そして、枯葉をのけてみると・・・

そこには、今は、何もありませんでした。
ただ、枯葉が盛ってあるだけだったのです。

なんとなく、ガッカリしたわたしが、
また、歩き出そうとして、
顔をあげると、

子グマが一匹、
わたしの脇を、すり抜けていきました。

わたしは、子グマのあとを、
追うことにしました。


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5. 子グマのあとを追う

子グマは、トッコトッコ、トッコトッコと、
歩いて行きました。

わたしも、そのあとを、
トッコトッコ、トッコトッコと、
くっついて行きました。

子グマは、時おり、ふんふんと鼻歌をうたいながら、
わき目もふらずに、進んで行きました。
いえ、時々、きょろきょろと、辺りを見回しているようです。

そのうち、小高い丘へ来ました。
子グマは、トットとその丘を登り、
わたしも、トットと登りました。

丘の頂上に、
1本の木がありました。
銀色をした、
立派なおおきな木です。

子グマは、するすると、その木を登りはじめました。
見ていると、木のてっぺんについた子グマは、
何かを目で探し求めているようです。

やがて、わたしのところからはよく見えない何かを見つけると、
さっと、手をのばして、それに飛びつきました。

子グマは、グン、とひと振りゆれると、
弧を描くようにして、
空の中へと、運ばれて行きました。


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6. 空の中へ

わたしも、続いて、するすると木に登りました。
子グマが飛びついたものは、なんだったのでしょう?

木のてっぺんにつくと、
わたしも目をこらして、その「何か」を探しました。

あ、ありました!
細い細い、目に見えるか見えないかの、細い糸です。
クモの糸なのでしょうか。

わたしは、その糸がゆらゆら揺れるのを目で追いながら、
飛びつくチャンスをうかがいました。
そして・・・

グーン、と糸に運ばれて、
空の中へ・・・

おや、今は、何時でしたっけ?
空の中は、夜です。
月が笑い、星がさやさやとささやいています。

子グマは、どこへ行ったのでしょう?


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7. 子グマとの再会

わたしは、月に手を振りながら、
夜空の星々のなかを歩きはじめました。
色々なものがいて、
色々なものがありました。

少しいくと、
子グマがいました。
宇宙船のよこに立って、
敬礼して何かを話しています。
子グマが話している相手は・・・
夜の女王でした。
立派な玉座に座っています。
美しい王冠を頭に戴いています。
何を話しているのかは、
わたしのところからは、分かりませんでした。

邪魔をしてはいけない気持ちになって、
わたしは、かたわらを通り過ぎました。

子グマに、チラと目で合図をおくりましたが、
子グマが気づいたかどうかは、わかりません。

わたしは、もっと、いろいろなものを見ようと、
先へ行きました・・・。


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8. いろいろなものに出会う

また少し行くと、
子ネコが、月の子供と遊んでいました。
月の子供は3日月形をしていました。
子ネコがじゃれつくと、
月の子供は、うれしそうに、キャッキャッと
笑っていました。

少し先に、
大きな真っ黒い木がありました。
木には、白い紙が貼ってあって、
地図が書いてありました。
「もっと、先へ行け」
と、書いてありました。

また少し行くと、
今度は、銀色の木がありました。
金色の鳥が、
赤い木の実をついばんでいます。
わたしは、鳥に聞きました。
「もっと、先へ行くと、何があるの?」
鳥は、一声高くさえずりましたが、
何も答えませんでした。

わたしは、さらに進みました。


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9. もっといろいろなものに出会う

わたしは、どんどんどんどん、
歩いて行きました。

クジラが白いきらめく星を
頭の上から吹き出していました。
星の生まれる場所は、
ここなのかしら?

黒ネコが、白い長い棒のうえを、
上手に歩いていました。
ときどき、逆立ちをしていました。

白鳥が、赤いボールを
頭の上にのせて、スイスイと泳いでいます。
わたしに、美しい珠を渡してくれた白鳥かどうかは、
分かりませんでした。話しかけようとしたら、
スイ、と行ってしまいましたから。

ウサギがどこからともなくやって来て、
わたしのまえを、ピョンピョンはねて行きます。
わたしは、あたりまえのような気持ちで、
あとをついて行きました。

そして・・・


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10. 白いもの

やがて、まわりには、
星々のほか、なにも見えなくなりました。

ウサギもいつの間にかいなくなってしまいました。

そして、今、とおくに、何か白い小さなものが、
見えていました。

星々の中に、ぽつんと、何かが、置いてあるようでした。
わたしは、その何かを目でたしかめようと、
走って行きました・・・


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11. 白いものは、何だったでしょう

それは、近づいて来ました。
少しずつ・・・
少しずつ・・・

それは、何か少し、四角い形をしているように、見えました・・・

もう少し、形がはっきりして来ました。

それは・・・

椅子でした・・・!

小さな、白い、可愛らしい、
椅子でした!


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12. 椅子に座る

それは、小さく、白く、
星々のあいだに、ポッカリと浮かんでいました。

わたしは、試しに、その椅子に座ってみることにしました。

たくさんの星が見えました。
濃い藍色をたたえた夜空の中で、
星々は、いかにも高貴にみえました。
そして、楽しげにみえました。

月が浮かんで、笑っていました。
ここへ来たときと同じように。
優しく。


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13. 穴

わたしは、しばらく、
夜空を眺めていました。

それは、とても、素敵な時間でした。

そして、そんな風に夜空を眺めているうちに、
何かおかしなことが、その夜空にあるのに気づきました。

わたしは、ある1点を、じっと、目を凝らして見ました。
そこは、白く丸く、ぽっかりと穴が開いているようでした。

何かがあったはずなのに、なくなってしまったように。

それから、わたしは、自分の手の中にある、
白鳥にもらった、美しい珠を見ました。

今、それは、前よりもずっと、美しく、
透明な青色に輝いていました。


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14. 青い珠

わたしは、その青い輝く珠を軽くつまんで、
白い穴に当て嵌めるかのように、
手を差し出しました。

すると、驚いたことに、
青い珠は、何かに引っぱられるかのように、
スルスルと、穴の方へと、逃げて行きました。

そして、あたりまえのように、
ポンッ、と、
その穴にはまったのです。

青い珠は、いまでは、
青い星になって、キラキラと瞬いていました。

ほかの星たちが、喜んで、
合唱をはじめたようでした。


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15. 宇宙船

そのとたん、
わたしが、星たちの合唱に耳を傾ける間もなく、
あの、子グマの宇宙船が、
わたしの傍らに来ていました。

ドアが開いて、
子グマが手招きをしています。

わたしは、誘われるままに、
ドアの中に入りました。

ドアが閉まる瞬間、
夜の女王が、わたしにむかって、
軽くおじぎをしたのが見えた気がしました。
が、確かなことは、ここでも分かりません。

わたしが、確かめようとする間もなく、
宇宙船は、もう、出発していました――。


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16. 帰路

宇宙船は、星々のあいだを抜けて、
ヒュウヒュウと突き進みました。

途中、わたしが出会った、
たくさんのものたちの顔がみえました。

子ネコはあいかわらず、月の子供と遊んでいましたし、
クジラは、星を吹いていました。

わたしは、それらの姿を見るうちに、
少し、名残り惜しい気がしてきました。
わたしには、もう、自分が帰路に就いているのが、
分かっていたのです。

子グマは、そのあいだ、
ずっと、窓の外を見ていました。


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17. 丘の上から

やがて、宇宙船は、スッ、と止まりました。

丘の上の、大きな銀色の木の真上に来ていました。
ドアが開き、
ドアから、木に向かって、
クモの糸が張られていました。

わたしは、子グマにさよならの挨拶をして、
クモの糸をつたって、
銀色の木のてっぺんに降り立ちました。

そして、木をスルスルと伝い降りて、
地面に足を降ろしました。

今では、地上から見ても、
空は夜の顔になっていました。

ひときわ明るく輝く青い星が、
月のそばで、瞬いています。
わたしが、置いてきたあの珠なのでしょうか?
やっぱり、たしかなことは、分かりません。


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18. 我が家

それから、わたしは、歩きはじめました。
森を抜けて、湖のそばを通り抜け、
我が家にたどり着きました。

わたしは、とても疲れていたので、
すぐに、ベッドに入って、
ぐっすりと、眠ってしまいました。


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19. ウサギ

よく朝、目が覚めて、
わたしは、昨日のことを思い起こしながら、
朝の空気を楽しもうと、
玄関のドアを開けました・・・

すると、そこには・・・
あの白い小さなウサギが来ていました。

ウサギは、またスープを所望しましたので、
わたしは、少し待つように言って、
キャベツとニンジンとインゲンのスープを
急いでこしらえ、
ウサギにやりました。

ウサギは、今度は何も言わずに、
ピョンピョンと、帰って行きました。


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20. クランベリーパイ

わたしは、ウサギはもう 、
来ないだろうという気がしたので、
スープの材料は、あわてて用意する必要はないだろうと、
考えました。

その代わりに、自分のために、
クランベリーと、小麦粉を、
今日は、買いに行くことにしました。
クランベリーのパイを焼こうと思ったのです。

おいしそうでしょう?

わたしの話は、
これで、おしまいです。


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