2009年10月3日土曜日

第 4 話 見知らぬ街

家を出た。
門を開き、閉じて、道に出た。

今となっては、どこへ行こうとしていたか、思い出せない。

なぜなら、家を出て、数歩も行かないうちに、
見知らぬ街に、迷い込んでいたらからだ。

道は、うねうねと曲がり、行き止まりが多かった。
家々は、それぞれ顔をもっており、
車は、動物のようだった。
道には、昼間から街灯がともり、
耳とシッポのはえた人々が、
にぎやかにおしゃべりをしたり、働いたりしていた。

「やあ、どこから来たね?」
「ああ、いえ、・・・さあ、どこだったか・・・」
「まあ、どこでもいいさ」「うちに寄って行かないかね?お茶でもどうだい」
「はい、それはどうも。ありがたくいただきます」

ウサギのような格好をした男にさそわれて、
家へと導かれた。

「あら、おかえりなさい。こちらは、どちら様?」
「父さん、お帰り。お客さんを連れて来てくれたんだね」
「そうさ。今日のお客さんだ。おい、母さん、お茶の用意をしておくれ」
「はいはい、分かっていますとも」

3人のウサギの家族だ。
おや、赤ん坊も1人いるようだ。では、4人家族なんだな。

「もう1人のぼうやは、寝ているのかい?」(旦那)
「ええ、それはもう、ぐっすり」(奥さん)
「でも、さっきまで、ずっと泣いてたんだ」(息子)

お茶の準備ができた。
不思議な香りのハーブティーと、
手作りのクッキーが出た。

「どちらから、いらっしゃいましたの?」
「さあ、それが、どうにも・・・」
「この方は、細かいことは気にしないのさ」
「南の丘の方から来たんじゃないの?」
「やあ、ぼうや、そうかも知れない」
「ほらね」

部屋の中には、たくさんの花が飾ってあった。
鉢植えもいっぱい並んでいた。

「美しい花ですね」
「ええ、それはもう。これは、家内の自慢なのです」
「わたくしが、自ら開発した品種もたくさんありますわ」
「いい香りです」
「ええ、それはもう」
「母さんは、花のことで頭がいっぱいなんだ。
こないだなんか、ぼく、鉢をたおして、怒られちゃった」
「それは、いけなかったね、ぼうや」
「でも、鉢は毀れなかったんだ。」
「でも、お花が1りん、落ちたわね。かわいそうだったわ」
「ぼうや、おまえまだ、母さんにごめんなさいを言っていなかったろう」
「知らないやい」

やがて、夕暮れになった。
父さんウサギが電気をつけ、
「夕食もご一緒に、いかがかな?」
「いえいえ、そろそろ家へ帰らねば」
「帰り方は、分かりますかな?」
「それが、どうにも」
「我が家の前の通りをわたると、広場があります。
その広場に、色の違う街灯が1本だけあるはずです。
行ってみれば分かりますよ。それが見つかれば、お家へ帰れるでしょう」
「ありがとうございます。奥さん、美味しいお茶をありがとう。
ぼうや、楽しかったよ」
「またね、おじさん」
「お気をつけてお帰りなさいまし」

ウサギの家を出ると、道をわたり、広場へと入って行った。
たくさんの街灯がともっていたが、人っ子一人いなかった。
わたしは、順番に、街灯の色を確かめていった。
11番目の街灯が、青色をしていて、
バラ色の他の街灯と違っていた。

わたしは、その前に佇んだ。

やがて、青色がふわっと、ふくらんでいき
わたしは、その光の中に包まれた。
光は、しだいに広がっていき・・・
めくるめく光の氾濫に、目が眩んだわたしは、
いつの間にか、目をしっかりと、つむっていた。

わたしが、おそるおそる目を開くと、
そこは、見なれた公園だった。
わたしの家の近所の、いつもの公園だった。
方向を確かめて、わたしは歩き出した。
夕暮だというのに、
街の人々が、総出で枯葉を掃いていた。
耳とシッポがはえている気がしたが、
まあ、なんでもないのだろう。

やっとこさ、家の前に辿りつき、
門を開け、門を閉めて、
ドアの中に入った。

妻が、にこやかに出迎えてくれた。
いつものように。
「お帰りなさい、あなた」
そして、
「今日は、素敵な花を街でみつけました。
ほら、こんなにめずらしい花ですわ」
と言って、
世にもめずらしい姿と香りの花を差し出したのだった。
ウサギの奥さんがつくった花なのかどうかは、分からない。

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